お墓を閉じる「墓じまい」が年々増えています。墓じまいは「改葬(かいそう)」とも呼ばれ、先祖代々のお墓から遺骨を取り出して更地に戻すことを指します。
ではなぜ墓じまいが増えているのでしょうか。
要因を調べてみると現代の社会情勢と深く関わりがあることが分かります。結論としてこれから先、先祖代々のお墓をずっと維持していくのは困難になります。
この記事では墓じまいが増えた理由を時代背景や社会情勢を絡めながら解説していきます。
目次
先祖代々のお墓の歴史
命日やお盆、お彼岸などにお墓参りをされる方も多いかと思います。わたしたちがよく知るお墓にはご先祖様の遺骨が埋葬されていますが、今のようなお墓の形になったのは明治時代になってからと言われています。
明治時代に制定された民法によって「家制度」が誕生し、庶民に名字が与えられ、「○○家」という家単位の意識が生まれました。当時の人々はこの家制度にのっとって、墓石に自分たちの名字を堀り、そのお墓に家族全員が眠るというスタイルが定着します。
一般的なお墓の歴史はまだ100数十年といったところです。
意外と歴史が浅いですね。
そのため、あなたの家のお墓には大体3〜4代前までのご先祖様が眠っているということになります。明治から始まった家制度は大正〜昭和へ時代が移り変わっても色濃く残っていきました。
昭和の時代にはまだまだ子だくさんの大家族も多く、一家が同じ屋根の下に暮らすことがほとんどでしたが、高度成長期に地方から都市部への人口流出がはじまると、核家族化、地方の過疎化が進んでいきました。
そして平成に入り、さらに少子高齢化社会が急速に進んだことはみなさんもよく知るところです。この少子高齢化、地方の過疎化がこれまで続いてきた先祖代々のお墓のあり方そのものを変えようとしています。
墓じまいが増えている理由6つ
墓じまいをする人が増えているのは明治時代から続いてきたお墓の形を維持することが難しくなってきたことが原因ということが分かりました。墓じまいが増えたその理由はいくつかありますが、主なものとしては以下のような理由があげられます。
理由1.少子化で墓守が不足
ご存知の通り、現代の日本は少子化が進んでします。内閣府発表の資料によれば、第1次ベビーブーム(昭和22〜24年)には年間約270万人もの新生児が誕生しています。そして第二次ベビーブーム(昭和46〜49年)に約200万人となって以降、年々減少を続けて平成29年にはついに100万人を割り込みました。
お墓は先祖代々受け継がれていくもので、通常その家の長男が「墓守(はかもり)」としてうけ継ぐのが一般的ですが、少子化のため墓守になる世代の人口が少なくなっています。
例えば、一人っ子同士が結婚して夫婦になると、2人で2つの墓を守っていかなくてはならず、この夫婦で旦那さん側のお墓に入れば、この子どもは両親が眠るお墓に加えて、母方の先祖の墓守をすることになり、さらにその子どもが同じ境遇の一人っ子と結婚すると合計4つの墓守をすることに。
人口減少社会において、これまでのような「一つの家に一つのお墓」を維持していくことは実質的に不可能となります。
理由2.非婚化の進行
今では、一生独身のまま生涯を終える人も少なくありません。単純に結婚できないという理由だけでなく、自由を謳歌したいからと、あえて結婚を選ばない人もいます。
平成22年の国勢調査による生涯未婚率は、男性20.1%、女性10.6%です。その30年前の昭和55年には男性2.6%、女性は4.5%。驚くことに男性は30年間で7.7倍も生涯未婚率が上昇しています。
現在では不景気の影響や、個人の価値観やライフスタイルが尊重する風潮から、結婚しないという選択は珍しくはありませんし、これからもその流れは続いていくでしょう。
もちろん生涯独身の方がお墓を継いだ場合、その方が亡くなったあとは必ずお墓が途絶えてしまうことになります。
理由3.高齢化で維持管理が難しい
墓じまいが増えている理由は少子化だけではなく、高齢化も大きな要因の一つ。
昭和の時代までは家族がひとつ屋根の下で一緒に生活するのが一般的でした。しかし核家族化が進み世帯が別々の場所で暮らし始めると、実質的にお墓を維持できるのが高齢者しかいないといったケースも珍しくありません。
そのため体力的な理由からお墓の維持管理ができなくなってしまったというお墓が増えています。家族という単位が縮小していけば、当然お墓も縮小していかなければ立ち行かなくなります。
理由4.地方の過疎化
高度成長期に地方から都市部へと人口の流出が相次ぎました。その後、地方に残った親族が亡くなり家が消滅するとお墓だけが取り残され無縁仏が急増。現在まで大きな社会問題となっています。
地方から都市部へ出てきてそこでずっと暮らしている方にとっては「親族ももういない土地にお墓だけがある」といった状況も少なくありません。そのため先祖の遺骨を自分が住む近くの墓地に引っ越す目的で墓じまいを選ぶ方が増えています。
理由5.お墓に対する関心が薄れている
核家族化が進んだことで、「家族のつながり」そのものが希薄なったと同時にこれまでは家族の心のより所であったお墓への関心も薄れて来ています。特に若い世代ではみずから進んで先祖のお墓参りに行くという方は稀です。
こうした世代がこれからお墓を継承していく墓守となりますが、そもそもお墓に関心が薄い世代がこれまでと同様にお墓の管理をしていくのは難しいのではないでしょうか。
理由6.お墓の維持が金銭的負担となってきた
「終活」という言葉が流行して、生きているうちに自分が亡くなったあとのことを考える機会が増えました。「お墓をどうするか」という課題は終活の中でも最も重要な項目の一つです。
終活に取り組む方の多くは自分の子どもに負担や迷惑をかけたくないと考えています。
前述の通り、お墓を維持していく難しさはこれまでの比ではありません。少子化で墓守の人工が少ないため、維持していく金銭的負担も大きな課題。終活ブームに伴って子どもに負担をかけたくない親世代が生きているうちに墓じまいをするケースが非常に増えています。
問題を先延ばしにしない「墓じまい」という選択
墓じまいが増えた原因と、現在のお墓の抱える課題や問題を解説してきました。
冒頭にも書きましたが、これから先、先祖代々のお墓を維持していくのは困難になります。これから起こるであろうお墓の継承問題を解決する一つの方法が「墓じまい」です。
先祖代々のお墓のこれから、お墓そのもののあり方を今一度考えるべきタイミングに来ています。
問題を先送りにせず、早めに準備をしておくのが望ましいでしょう。
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